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リサーチコーチングは、大学院生や若手研究者、臨床家の方々が研究計画書の作成や研究論文執筆を進めるうえで、効果的なサポートを提供するアプローチです。研究指導との共通点はあるものの、対話的アプローチや目標設定、フィードバックなど、「コーチング理論」に基づく技法を用いる点で独自の特徴を持ちます。
私はThriver Projectにおいて、リサーチコーチとして活動しており、様々な分野の大学院生や研究者の研究活動を支援しています。でもこれまで、リサーチコーチングについて考えていることを言語化していませんでした。なので、本記事では、私のこれまでの経験を踏まえて、リサーチコーチングの理論的基盤、目的、方法、そして実際まで解説していきます。
リサーチコーチングという方法論は、あまり聞きなれない方が多いかと思いますので、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
私の考えるリサーチコーチングの中心には、コーチング理論と構造構成主義があります。
コーチング理論は、「人は自分自身の中に答えを持っている」という前提が重視されます。なので、リサーチコーチングでは、対話を通じた大学院生や研究者の自己発見と行動変容を重視します。
リサーチコーチの役割は、答えを教えるのではなく、質問やフィードバック、目標設定の支援を通じて、本人の自発的な気づきと行動を促すことです。リサーチコーチングにおいては、“何を研究テーマとするのか”、“どのように進めていくのか”などを自分の言葉で説明できるように促す働きが大切になります。 すなわち、リサーチコーチングはただ知識を与えるティーチングだけでなく、相手の思考を整理し、研究上の課題や目標を明確化させる「対話」を通じて行われる点が特徴です。
もうひとつの特徴として、ティーチングを組み合わせるハイブリッドアプローチが挙げられます。研究は高度な知識や技術が求められるため、大学院生や研究者の理解に応じて必要な情報を提供する必要があるからです。
コーチングとティーチングを円滑に組み合わせるために構造構成主義を基盤にしています。構造構成主義は志向相関性という原理を軸に様々な考え方ややり方を柔軟に組み合わせることが可能な哲学です。それにより、ハイブリッドアプローチの実質化を行っております。
リサーチコーチングの主な目的は、研究活動のプロセス全般において、研究者の思考をクリアにし、行動を促進することです。
具体的には、研究計画書の作成支援が挙げられます。研究テーマ選定から背景文献の整理、研究目的や仮説の設定、研究方法の選択などをサポートし、論理的に矛盾がない計画書を組み立てられるように促すことが重要です。
次に、研究論文執筆のサポートも大きな目的のひとつです。構成の検討や各章の論理展開、文献レビューのまとめ方など、執筆のプロセス全般を支援します。コーチングで得られた気づきをもとに修正を加え、より読みやすく説得力のある論文を目指します。
このように、リサーチコーチングのゴールは、“研究を円滑に進めるためのプロセスを整え、研究者本人が自律的に学び続けられる状態をつくること”にあります。
リサーチコーチングでは、コーチングとティーチングを組み合わせながら、対話的アプローチ、目標設定、フィードバックなどの技法を駆使します。ここでは主な方法を3つに分けて解説します。
コーチングは問いかけやフィードバックが中心ですが、研究の専門知識や方法論が必要な場面では、ティーチング(指導・教授)も組み合わせる必要があります。たとえば「この分析手法を使うならこういう前提がある」など、知識提供がなければ先に進めないケースが多々あります。このとき、コーチング的な質問だけでなく、必要に応じて情報を与えるティーチングを行うことで、研究者の理解を深めることができます。
研究者自身が望むゴールを明確化するために、対話を重ねながら目標を設定します。たとえば、「学会発表をいつまでにどの段階までもっていくか」「研究計画書を提出する期限はいつで、そのために何をいつまでに完成させるか」など具体的な計画を立てます。この過程で重要なのが、コーチが“問い”を投げかけ、研究者自身が思考を整理する時間を確保することです。
目標設定後は、コーチが定期的にフィードバックを行い、研究の進捗を確認・修正していきます。フィードバックは指摘だけではなく、進捗状況や課題に対して「なぜそう考えたのか?」と問いかけ、深く掘り下げる対話がメインとなります。また、一定の期間ごとに「今、どこまで進み、これから何をすべきか」を振り返る機会を設けることで、研究の方向性を見失わないようにサポートします。
大学院生に対する研究指導とリサーチコーチングは似ている部分もありますが、そのアプローチと位置づけに違いがあります。
大学院での研究指導は、指導教員が専門知識を活かして学生の研究を直接指導する「ティーチング」の側面が強いといえます。これに対し、リサーチコーチングは“研究者本人の自律性”を引き出すことが主眼です。もちろん専門的な知識や助言が必要な場面では指導を行うものの、基本的には対話を通じて研究者本人の考えを引き出し、そのうえで必要な情報を適宜提供します。
さらに、大学院の指導教員は評価者という立場も兼ねるため、学生が自由に意見を言いづらいというケースもあります。一方、リサーチコーチは必ずしも評価者ではなく、伴走者的なポジションを取りやすいため、相談しやすく、実践と振り返りを主体的に繰り返すことが可能です。
リサーチコーチングは、研究計画書作成や論文執筆のプロセスを円滑に進めるために、コーチング理論を軸とした対話的アプローチや目標設定、フィードバックを活用する新しいサポート手法です。
大学院生や若手研究者、臨床家など、研究に取り組む多くの方々にとって、専門知識の提供だけでは解決できない問題は少なくありません。自分のアイデアを明確にし、それをどのように形にしていくかは、研究者自身が主体的に考え抜く必要があります。リサーチコーチは、そのための対話や問いかけ、必要なときの指導を組み合わせ、研究を加速させるサポートを行います。
従来の大学院での研究指導と併用することによって、研究活動の質とスピードを高められるのがリサーチコーチングの利点です。実践を重ねることで、研究者が自ら問題を発見し、自律的に解決策を導き出す力が養われます。もし研究に行き詰まったり、計画や執筆がうまくいかないと感じたりする方は、一度リサーチコーチングを検討してみてはいかがでしょうか。
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