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量的研究を始めるにあたって、まず必要となるのが「研究仮説」です。研究仮説とは、研究対象に関する検証可能な推測のことです。これは、研究の方向性を決める重要な役割を果たします。
しかし、適切な研究仮説を立てるのは意外と難しいものです。そこで、この記事では、研究仮説の立て方のコツを解説します。
良い研究仮説は、明確な研究テーマから生まれます。まず、何を研究したいのか、何を知りたいのかを具体的に絞り込みましょう。例えば、「作業機能障害」という漠然としたテーマではなく、「統合失調症をもつ青年における作業機能障害に影響を与える要因」のように、具体的な研究テーマを設定することで、より焦点を絞った研究仮説を立てることができます。具体的なテーマは、自分の興味や現場での経験からヒントを得ると良いでしょう。
先行研究を調べることは、研究仮説を立てる上で非常に重要です。既に解明されている事実や理論、他の研究者がどのような仮説を立てて検証しているのかを知ることで、自身の研究の独自性や方向性を明確にすることができます。また、先行研究の不足点や矛盾点であるリサーチギャップを見つけることで、新たな研究仮説を生み出すヒントが得られることもあります。先行研究は学術雑誌やオンラインデータベース(例:PubMed, Google Scholar)で見つけることができます。また、大学図書館なども活用しましょう。
研究仮説は変数間の関係性を示すものです。そのため、扱う変数を明確に定義する必要があります。例えば、「リハビリテーションプログラムの頻度が高いほど、患者の歩行能力が向上する」という仮説の場合、「リハビリテーションプログラムの頻度」と「患者の歩行能力」が変数となります。変数は、自分が測定可能であり、かつ理論的に関連性があるものを選びましょう。
研究仮説は、検証可能な形でなければ意味がありません。検証可能な研究仮説とは、データ収集や分析を通じて、その真偽を確かめられることです。例えば、「患者は親しみやすい医師による治療を好む」という曖昧な仮説よりも、「患者は医師との対話時間が長いほど治療への満足度が高まる」という具体的な仮説であれば検証しやすくなります。
研究仮説は、簡潔で分かりやすい言葉で記述することが重要です。複雑な表現や専門用語は避け、誰にでも理解できる言葉で表現しましょう。研究仮説が複雑だと、検証方法も複雑になり、研究全体の進行がスムーズに進まなくなる可能性があります。ただし、簡潔さと詳細さのバランスも重要なので、過不足なく仮説が理解できるよう工夫してください。
研究仮説を設定する際には、1つの研究テーマに対して、複数の研究仮説を検討することも重要です。1つの研究テーマから1つの研究仮説しか導出し、それに固執してしまうと、視野が狭くなり、重要な研究仮説を見逃してしまう可能性があります。様々な角度から研究テーマを検討することで、より多角的な研究仮説の導出が可能になります。
研究を進めていく中で、当初の研究仮説が間違っていることに気付く場合もあります。そのような時は、柔軟に研究仮説を変更する勇気を持ちましょう。そして、検討を重ねて、新しく研究プロジェクトをはじめればOKです(それはそれで超大変ですけども)。研究仮説はあくまで推測であり、研究の結果によって修正されることは当然のことです。
研究仮説を立てることは、研究をはじめるために欠かせないステップです。この記事で紹介したコツを参考に、検証可能で、研究テーマに合致した、質の高い研究仮説を立て、研究を進めていきましょう。それによってあなたの研究がより効果的かつ有意義になるでしょう。
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京極真、博士(作業療法学)、作業療法士。
Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:保健科学研究科長、人間科学部長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了。研究関連の著書に『セラピストのための研究論文書き方ガイド』(三輪書店)、『作業で創るエビデンス』(医学書院)、『質的研究で使えるコーディング入門ガイド』(Thriver Books)がある。その他、著書、研究論文多数あり。
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