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本記事では、研究計画書や研究論文の執筆に欠かせないスキルである「パラグラフ・ライティング」について解説します。パラグラフ・ライティングは、論理的でわかりやすい文章のまとまり(パラグラフ)を構成するライティング手法です。これは、ちゃんとトレーニングすれば習得できるスキルです。学術的な文章を書く必要がある人は必ず習得しておきましょう。
なお、パラグラフ・ライティングについては、以下の論文でも詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
パラグラフ・ライティングは、アイデアや知見を論理的でわかりやすい文章として構成するために欠かせないライティングスキルです。本記事では、研究計画書や研究論文で使用することを念頭においていますが、メール、ブログ、報告書などでも使用することができます。
典型的なパラグラフは、3つの役割をもつセンテンスで構成されます。パラグラフには、そのパラグラフの主張を伝えるトピック・センテンスを配置します。その後に、トピック・センテンスを裏付ける根拠となる追加の文章であるサポート・センテンスが続き、最後にパラグラフを締めくくるコンクルーディング・センテンスがきます。トピック・センテンスとサポート・センテンスはパラグラフに欠かせませんが、コンクルーディング・センテンスは文脈にあわせて書いたり、書かなかったりできます。
研究計画書や研究論文は複数のパラグラフで構成されます。例えば、「はじめに」は、3つから5つぐらいのパラグラフでリサーチギャップを基盤にした目的や仮説を導出していきます。また「考察」は主な結果の要約、結果と過去の重要な知見との関連付け、利点と欠点などに関するパラグラフを作って、結果の分析と説明を展開していきます。このように、研究計画書や研究論文はいくつものパラグラフを組み合わせることによって成り立っています。
パラグラフ・ライティングは著者にとっても、読者にとっても利点があります。例えば、著者は統一感のある組織化された文章を作ることができます。読者は、著者の主張をより良く理解することができます。この方法は、トピック・センテンス、サポート・センテンス、コンクルーディング・センテンスで文章を構成する構造化されたものなので、著者にとっても読者にとっても文書の壁が低くなるのです。
トピック・センテンスは、パラグラフの中で最も重要な文です。トピック・センテンスとは、パラグラフで伝いたいメッセージを明確かつ簡潔に反映させた文であり、その内容は広すぎても狭すぎてもダメです。これは、パラグラフ全体のテーマや議論に関連しており、1つのパラグラフには1つのトピック・センテンスを書きます。トピック・センテンスは、パラグラフの主旨を述べているため一番重要であり、それを読めば以降の文を読まなくても伝えたいことが伝わります。
トピック・センテンスは、パラグラフの冒頭に置くのが一般的ですが、必ずしもそうしなければならないということではありません。トピック・センテンスは、パラグラフの冒頭に配置した方が書きやすいです。なので、通常はその方法をおすすめします。他方、著者のライティングスキルが高ければ、パラグラフの途中にトピック・センテンスを配置しても、十分に書き進めることができます。自身のライティング・スキルにあわせてどこに書くかを判断していけばよいです。
サポート・センテンスは、トピック・センテンスに関する詳細な情報を提供するものです。サポート・センテンスは、トピック・センテンスをさらに説明し、発展させ、サポートする役割を担うため、1つのパラグラフに複数のサポート・センテンスが含まれることになります。例えば、先行研究による裏付け、事実、具体例、補足説明、理由付けなどがあります。サポート・センテンスは、明確にトピック・センテンスと関連性がある文を追加することにより、その理解に役立つ情報を提供するのです。
なお、サポート・センテンスでは新しいトピックをはじめてはいけません。サポート・センテンスは、トピック・センテンスを補強する文のことであり、トピック・センテンスと明確に一貫している必要があります。サポート・センテンスで新しいトピックをはじめる必要がでてきたら、別のパラグラフで論じるか、パラグラフの構成を見直すとよいです。
コンクルーディング・センテンスは、パラグラフの要点をまとめるために書きます。ここでは通常、パラグラフで述べてきた内容を要約したり、パラグラフ内で議論された要点を強調したりします。これにより、読者はパラグラフの内容を再確認し、パラグラフで最も重要なポイントを理解することができます。また、コンクルーディング・センテンスでアイデアをつなぐことができます。例えば、パラグラフの最後の文を上手く書けば、パラグラフからパラグラフへと論理的にわかりやすく読者を導くことができます。コンクルーディング・センテンスはパラグラフの要点をまとめて、読者にその段落で提供された情報の意味について考えさせることができます。
なお、トピック・センテンス、サポート・センテンスは必ずパラグラフに含まれますが、コンクルーディング・センテンスはそうではありません。例えば、サポート・センテンスが短い場合、コンクルーディング・センテンスを書くと冗長になる場合があります。そうしたときは、コンクルーディング・センテンスを書かずに次のパラグラフに移行することもあります。
すべてのパラグラフには、主となるトピック(ポイントやアイデア)が必要です。トピック・センテンスは、そのパラグラフで最も主張したいことを反映するものでなければなりません。
トピック・センテンスの書き方のコツは以下の通りです。
サポート・センテンスは、トピック・センテンスについて説明したり、補足したり、例示したり、根拠付けたりする文です。ここでは、主なアイデアを詳しく説明し、事実や詳細を提供し、より深く理解するためのポイントを書きます。
サポート・センテンスの書き方のコツは以下の通りです。
コンクルーディング・センテンスはパラグラフの要約であり、パラグラフの内容をまとめるものです。それによって、パラグラフが論理的な結論に達したことを読者に伝えます。
コンクルーディング・センテンスの書き方のコツは以下の通りです
最後に、パラグラフを見直します。書いた内容を読み直し、サポート・センテンス、コンクルーディング・センテンスがトピックセンテンスに論理的にわかりやすく関連しているか、誤字脱字がないか、を確認します。また、複数のパラグラフが論理的につながっており、研究計画書や研究論文のテーマを支えているか、を確認してください。
本記事では、パラグラフ・ライティングについて解説しましたが、これを習得するにはトレーニングが必要です。Thriver Projectでは、無料でパラグラフ・ライティング自主トレーニングシートを提供しております。「このライティングスキルを習得したい!」という方は、この機会にぜひご利用ください。
京極真、博士(作業療法学)、作業療法士。
Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:保健科学研究科長、人間科学部長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了。研究関連の著書に『セラピストのための研究論文書き方ガイド』(三輪書店)、『作業で創るエビデンス』(医学書院)、『質的研究で使えるコーディング入門ガイド』(Thriver Books)がある。その他、著書、研究論文多数あり。
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