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こんにちは。これから質的研究について学んでみたいと思っているみなさん、質的研究って何だかよくわからないな、と感じている方も多いのではないでしょうか。でも、大丈夫です。ゆっくりと、一緒に理解を深めていきましょう。
質的研究は、人間の経験(感情、思考、行動など)を深く理解するための研究方法です。例えば、病気と向き合う人の気持ちを知ったり、子育ての喜びや難しさを探ったりするのに、質的研究は役立ちます。数字だけでは表せない現象を解き明かすのが、質的研究なのです。
本記事では、質的研究パラダイムの基本的な考え方をわかりやすく解説していきたいと思います。一緒に、質的研究の第一歩を踏み出してみましょう。
さて、質的研究パラダイムについて学ぶ前に、「パラダイム」という言葉の意味を確認しておきましょう。パラダイムとは、私たちが物事を理解したり、考えたりするときの「型」や「枠組み」のようなものです。私たちは無意識のうちに、自分の持っているパラダイムに基づいて、世界を見たり、判断したりしているのです。
例えば、「リンゴが木から落ちる」という現象を見たとき、ニュートンは「万有引力」というパラダイムで理解しました。一方、アインシュタインは「相対性理論」というパラダイムで、同じ現象を別の角度から説明したのです。このように、パラダイムが変われば、世界の見え方も変わってくるのです。
研究では、パラダイムは大切な役割を果たしています。研究者が持っているパラダイムによって、研究の目的や方法、結果の解釈の仕方が変わってくるのです。だから、質的研究を学ぶ前に、パラダイムについて理解しておくことは、とても重要なのです。
質的研究パラダイムの概要
では、質的研究のパラダイムとは、どのようなものでしょうか。質的研究パラダイムは、質的研究を行うための基本的な考え方や、研究者の立ち位置を示してくれます。それは、研究対象をどのように捉え、どのような方法で研究を進めるべきかを教えてくれる、羅針盤のようなものなのです。
質的研究パラダイムは、量的研究パラダイムとは、大きく異なります。量的研究は、数字を使って客観的に物事を測定し、統計的に分析する研究方法です。それに対して、質的研究は、言葉や行動の意味を解釈し、人間の主観的な経験を大切にする研究方法なのです。質的研究は、人間のリアルな姿に迫ろうとするのが特徴です。
質的研究パラダイムには、大切にしている考え方がいくつかあります。一つは、客観的な真理よりも、人々の主観的な経験を重視するという考え方です。同じ出来事でも、人によって受け止め方は異なります。だからこそ、質的研究では、一人ひとりの経験を丁寧に扱うことが大切なのです。
また、質的研究パラダイムは、複数の現実が存在することを認めています。私たちは、自分の立場や背景によって、世界を異なる角度から見ているのです。質的研究では、多様な視点を集めることで、より立体的な理解を目指します。
そして、質的研究パラダイムは、文脈を重視します。人間の経験は、その人を取り巻く環境や状況と切り離せません。だから、質的研究では、社会的・文化的・政治的な文脈を考慮しながら、データを理解していくことが求められるのです。
質的研究パラダイムには、独自の特徴があります。まず、言葉で表現されたデータを大切にします。インタビューで聞いた話や、現場で観察したことなどが、質的研究の貴重なデータになるのです。数字では捉えきれない、生きた情報を扱うのが質的研究の醍醐味です。
また、質的研究は、自然な環境でデータを集めることを重視します。実験室ではなく、日常の場面で人々の姿を観察したり、話を聞いたりするのです。そうすることで、その人らしさや、リアルな経験に触れることができるのです。
さらに、質的研究は、仮説検証型ではなく、データから新しい考えを生み出していく仮説生成型の探索的な研究スタイルをとります。最初から答えを決めるのではなく、データと対話しながら、そこから学んでいくのです。研究者自身の主観性も、大切な手がかりとして活用されます。
質的研究と量的研究は、研究へのアプローチが大きく異なります。量的研究は、厳密にコントロールされた条件の中で、客観的なデータを集めることを重視します。一方、質的研究者は、そのような方法では、人間の複雑さや微妙なニュアンスを十分に捉えられないと考えるのです。
ただし、質的研究が量的研究より優れているわけではありません。それぞれの研究方法には、長所と短所があります。大切なのは、研究の目的に合わせて、適切な方法を選択することです。質的研究と量的研究を組み合わせることで、より深い理解が得られることもあるでしょう。
質的研究パラダイムについて、少しイメージが湧いてきたのではないでしょうか。質的研究パラダイムは、人間の主観的な経験を大切にし、言葉で表現されたデータを丁寧に扱う研究の型です。研究者自身の視点も活かしながら、新しい発見を目指していくのが質的研究のスタイルだと言えます。
質的研究は、私たち人間の奥深さや多様性を理解するのに、とても役立つ研究方法です。でも、質的研究を学ぶのは、少し大変に感じるかもしれません。ゆっくりと、一歩ずつ、理解を深めていくことが大切です。みなさんの質的研究への挑戦を、心から応援しています。
京極真、博士(作業療法学)、作業療法士。
Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:保健科学研究科長、人間科学部長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了。研究関連の著書に『セラピストのための研究論文書き方ガイド』(三輪書店)、『作業で創るエビデンス』(医学書院)、『質的研究で使えるコーディング入門ガイド』(Thriver Books)がある。その他、著書、研究論文多数あり。
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