【入門】統計解析の基礎【量的研究】


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【入門】統計解析の基礎【量的研究】

 研究を行う際には、データを収集し、分析し、解釈することが必要です。その中でも、統計解析は、量的データを用いて傾向やパターン、関係性を調べる重要な方法です。統計解析を使えば、科学的な根拠に基づいて研究の結果や意義を示すことができます。しかし、統計解析には様々な種類や手順があります。どのように統計解析を行うかは、研究の目的や仮説、デザインなどによって異なります。本記事では、統計解析の基礎についてわかりやすく解説します。

統計解析とは

 統計解析とは、量的データを用いて傾向やパターン、関係性を調べる方法です。量的データとは、数値で表されるデータです。例えば、身長や体重、尺度の点数、気温や降水量などが量的データにあたります。


 量的データには、離散型と連続型の二つの種類があります。離散型データとは、整数で表されるデータです。例えば、コインの表裏やサイコロの目などが離散型データにあたります。連続型データとは、実数で表されるデータです。例えば、身長や体重などが連続型データにあたります。


 統計解析には、記述統計と推測統計の二つの種類があります。記述統計とは、データの要約や整理を行う方法です。例えば、平均や標準偏差、最大値や最小値などの統計量を求めたり、ヒストグラムや折れ線グラフなどの図表を作成したりします。推測統計とは、サンプルから母集団について推測する方法です。例えば、t検定やANOVAなどの検定法を用いて仮説を検証したり、回帰分析や因子分析などのモデリング法を用いて変数間の関係性を探索したりします。


 統計解析は統計ソフトを用いて実行します。お薦め統計ソフトについては、以下の記事で詳述していますので、ご参照ください。

仮説と研究デザイン

 研究の目的は、母集団内の変数間の関係性を調べることです。変数とは、測定や操作される対象です。例えば、身長や体重などの特性や属性を表す変数を属性変数と呼びます。また、実験や介入によって操作される変数を操作変数と呼びます。操作変数には、原因となる変数を独立変数(説明変数)と呼び、結果となる変数を従属変数(目的変数)と呼びます。


 研究では、母集団について仮説を立てて、統計解析を用いて検証します。仮説とは、母集団についての予測を表したものです。


 仮説には、帰無仮説と対立仮説の二つがあります。帰無仮説とは、母集団において変数間に関係性がないという仮説です。例えば、「身長と体重には関係性がない」という仮説が帰無仮説にあたります。対立仮説とは、母集団において変数間に関係性があるという仮説です。例えば、「身長と体重には正の相関がある」という仮説が対立仮説にあたります。


 研究デザインとは、データ収集と分析の全体的な戦略です。研究デザインには、記述的、相関的、実験的などの種類があります。記述的研究デザインとは、現象や事象をそのまま記述する方法です。例えば、人口統計や意識調査などが記述的研究デザインにあたります。相関的研究デザインとは、変数間の関係性を探索する方法です。例えば、身長と体重の相関や学力と自己効力感の相関などが相関的研究デザインにあたります。実験的研究デザインとは、操作変数を用いて因果関係を検証する方法です。例えば、薬物やトレーニングの効果や教育法やカウンセリングの効果などが実験的研究デザインにあたります。


 研究デザインについては以下の記事でも解説しています。

サンプリング

 母集団全体からデータを収集することは難しいか費用がかかる場合が多いため、サンプルからデータを収集します。サンプルとは、母集団から選択された一部分です。適切なサンプリング方法を用いれば、サンプルから母集団について推測することができます。


 サンプリングには、確率サンプリングと非確率サンプリングの二つの方法があります。確率サンプリングとは、母集団内の各要素がサンプルに選択される確率がわかっている方法です。例えば、単純無作為抽出や層別抽出などが確率サンプリングにあたります。非確率サンプリングとは、母集団内の各要素がサンプルに選択される確率がわからない方法です。例えば、便宜抽出や意図的抽出や雪だるま法などが非確率サンプリングにあたります。


 なお、母集団とサンプリングについては、以下の記事でも詳述しています。

サンプルサイズの計算

 サンプリングにあたっては、サンプルサイズを計算します。サンプルサイズとは、サンプルに含まれる要素の数です。サンプルサイズが大きければ大きいほど、サンプルの特性が母集団の特性に近づきます。しかし、サンプルサイズが大きすぎると、データ収集や分析に時間や費用がかかります。


 サンプルサイズを決める際には、信頼水準や信頼区間、効果量などの要因を考慮します。信頼水準とは、母集団のパラメータが信頼区間内に含まれる確率です。信頼区間とは、母集団のパラメータの推定値の周囲に設定される範囲です。効果量とは、変数間の関係性の強さや差の大きさを表す指標です。

記述統計と推測統計

 統計解析には、記述統計と推測統計の二つの種類があります。記述統計とは、サンプルから得られたデータを整理したり、要約したりする方法です。推測統計とは、サンプルから得られた統計量をもとに、母集団のパラメーターについて推測する方法です。

記述統計

 記述統計とは、サンプルから得られたデータを整理や要約する方法です。記述統計には、代表値や散布度などの指標や、表やグラフなどの視覚的な方法があります。


 代表値とは、データの中心的な傾向を表す指標です。代表値には、平均値や中央値や最頻値などがあります。平均値とは、データの合計をデータの個数で割った値です。中央値とは、データを昇順または降順に並べたときに真ん中に位置する値です。最頻値とは、データの中で最も多く出現する値です。


 散布度とは、データのばらつきや偏りを表す指標です。散布度には、標準偏差や分散や範囲などがあります。標準偏差とは、データが平均値からどれだけ離れているかを表す指標です。分散とは、標準偏差の二乗です。範囲とは、データの最大値と最小値の差です。


 表やグラフなどの視覚的な方法とは、データの分布や傾向を目で見て理解しやすくする方法です。表やグラフには、ヒストグラムや折れ線グラフや散布図などがあります。ヒストグラムとは、データを区間ごとに分けて棒グラフで表示する方法です。折れ線グラフとは、データの変化を線でつないで表示する方法です。散布図とは、二つの変数の関係性を点で表示する方法です。


>>「記述統計入門」を読む

推測統計

 推測統計とは、サンプルから得られた統計量をもとに、母集団のパラメーターについて推測する方法です。推測統計には、推定と仮説検定の二つの方法があります。


 推定とは、サンプルから得られた統計量をもとに、母集団のパラメーターの値を予測する方法です。推定には、点推定と区間推定の二種類があります。点推定とは、パラメーターのただ1つの推測値であり、サンプルから得られた統計量そのものです。例えば、母平均の点推定値はサンプル平均です。区間推定とは、パラメーターが含まれる可能性の高い範囲であり、サンプルから得られた統計量に誤差の範囲を加えたものです。例えば、正規分布を仮定できる場合、母平均の区間推定値は標本平均±標準誤差×信頼係数で求めることができます。


 仮説検定とは、母集団に関する仮説を検証する方法です。仮説検定では、帰無仮説が母集団で真であるという前提から始めて、サンプルから得られたデータが帰無仮説とどれだけ異なるかを検討します。仮説検定には、検定統計量(t値、f値)やp値などの出力があります。これらの指標を基にして、帰無仮説が棄却されるか否かを判断します。帰無仮説が棄却されるということは、対立仮説が採択されるということです。このようにして、仮説検定では母集団に関する仮説を検証することができます。

統計モデル

 統計解析では、変数間の関係性や差異を検討するために様々な統計モデルを使用します。統計モデルには、回帰分析や相関分析などの関連分析や、t検定や分散分析などの比較テストなどがあります。


 変数間の関係性を調べる方法には、回帰分析や相関分析などがあります。回帰分析とは、一つ以上の独立変数から従属変数を予測する方法です。回帰分析には、単回帰分析や重回帰分析やロジスティック回帰分析などがあります。相関分析とは、二つの変数間の相互関係の強さや方向を表す方法です。相関分析には、ピアソン相関分析、スピアマン相関分析、ケンドール相関分析、ポリコリック相関分析、ポリシリアル相関分析、テトラコリック相関分析、バイシリアル相関分析などがあります。


 グループ間の平均値の差を検証するための方法として、t検定や分散分析がよく用いられます。具体的に、t検定は2つのグループの平均値が異なるかを調べる際に使用されます。このt検定には、対応のある場合と対応のない場合の2つの主要なタイプが存在します。一方、3つ以上のグループの平均値を比較する場合は、分散分析が適しています。分散分析には、一元配置分散分析(1つの要因でグループ分けされた場合)や二元配置分散分析(2つの要因でグループ分けされた場合)などの種類があります。これらの手法を適切に利用することで、グループ間の差に加え、異なる要因の組み合わせがどのように影響するかの相互作用も明らかにすることが可能です。以上が、グループ間の平均値の差を検証する主な方法です。


 統計モデルを選ぶ際には、研究の目的やデザイン、データの特性などを考慮する必要があります。例えば、データの種類や分布や尺度などによって、適切な統計テストが異なります。

結果の解釈

 結果の解釈では、効果量、p値、信頼区間、エラーの種類などを考慮します。効果量とは、研究の効果の大きさを示す指標です。効果が存在するかどうかを示すだけでなく、その効果の大きさを数値化するものです。p値とは、帰無仮説が正しいとした場合に、ある統計量が観測される確率です。p値は帰無仮説や対立仮説が真である確率ではありません。信頼区間とは、母集団のパラメータが含まれると推定される区間です。効果が存在するかどうかを示すだけでなく、その効果の大きさを数値化するものです。エラーの種類とは、帰無仮説の判断において起こりうる誤りであり、タイプ1とタイプ2があります。タイプ1エラーとは、帰無仮説が正しいにもかかわらず、帰無仮説を棄却することです。タイプ2エラーとは、帰無仮説が間違っているにもかかわらず、帰無仮説を採択することです。


 さらに、ベイズ統計という別の統計的アプローチも存在します。この手法は、事前分布(データ取得前のパラメータに関する既存の知識や確信度を示す分布)と尤度(データが得られた条件下でのパラメータの尤もらしさを示す関数)を組み合わせて、事後分布(データ取得後のパラメータに関する更新された知識や確信度を示す分布)を求めるものです。ベイズ統計の結果の解釈の例としては、ベイズファクターの利用があります。ベイズファクターは、帰無仮説と対立仮説の最もらしさを比較するための指標です。ベイズファクターが1より大きければ、対立仮説が帰無仮説よりも尤もらしいことを示します。ベイズファクターが1より小さければ、帰無仮説が対立仮説よりも尤もらしいことを示します。ベイズファクターが1に近ければ、どちらの仮説もほぼ同じ尤もらしさであることを示します。

まとめ:【入門】統計解析の基礎【量的研究】

 統計解析は、量的データを用いて傾向やパターン、関係性を調べる方法です。統計解析には、記述統計と推測統計の二つの種類があります。記述統計とは、サンプルから得られたデータを整理や要約する方法です。推測統計とは、サンプルから得られた統計量をもとに、母集団のパラメーターについて推測する方法です。本記事では、記述統計と推測統計の違いと使い方について解説しました。また、統計モデルや結果の解釈についても紹介しました。統計解析をマスターすれば、研究の質や信頼性を高めることができます。

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