記事内にプロモーションを含む場合があります
研究論文を書く場合、研究論文が受理され、出版されるためには、遵守しなければならない特定のガイドラインが存在します。その中で最も一般的なものは、IMRaD(Introduction, Methods, Results, and Discussion)と呼ばれるフォーマットです。効率的・効果的に研究論文を書くためにIMRaDが広く活用されており、私の連載『基礎から始める研究論文の書き方講座』(作業療法ジャーナル、三輪書店)でも、IMRaDにしたがったライティングテクニックを解説しています。
IMRaDと他のガイドラインの違いは、研究デザインにほとんど関係なく適用できるところにあります。他のガイドラインは研究デザインに依存しています。例えば、ランダム化比較試験はCONSORT、観察研究はSTROBE、事例報告はCARE、質的研究はSRQR、といった具合にです。他方、IMRaDは研究デザインにほとんど関係なく適用できる特徴があります。あなたが使用した研究デザインが質的研究でも、ランダム化比較試験でもIMRaDを使うことができます。とても汎用性が高いのです。
この記事では大学院生や駆けだしの研究者といった初学者を対象にして、自信を持って自分の研究論文を書き始めることができるように、この執筆フォーマットの概要をさくっと説明します。
本題に入る前に、IMRaDの歴史についてさくっとおさらいしておきます。
IMRaD構造の起源は、生物学者や医学研究者が研究成果を学術誌に研究論文として発表しはじめた20世紀初頭に遡ることができます。当時、研究論文の構造は標準化されておらず、著者や雑誌によって異なるフォーマットが使われていました。しかし、学術界が発展していくつれて、研究成果の発表方法を標準化することが求められるようになりました。
そこで開発されたのがIMRaDです。これは、瞬く間に多くの分野の研究論文の主流となりました。IMRaDは、研究の主要な結果を論理的かつ明確に示すために設計されていたからです。現在、IMRaDは学術界で広く使用されており、多くの学術誌で研究論文のフォーマットとして採用されています。なので、初学者はこれを習得する必要があるわけです。
それでは本題です。ここでは、私の上記の連載論文をもとに、IMRaDを概説します。効果的な書き方のヒントを理解しましょう!
序論では、研究テーマの背景と、なぜそれが重要なのかを説明する必要があります。また、研究を実施する目的は何なのかを明確に記述する必要があります。トピックに関連する先行研究や理論など、関連する背景情報についても簡単に説明することが重要です。このセクションの最後には、研究を通して答えようとする仮説やリサーチクエスチョンを記載する必要があります。
このセクションでは、どのように研究を実施したかを説明し、研究で使用した方法に関する情報を過不足なく含める必要があります。これには、参加者の選択基準、使用した材料、データ収集の手順やそれに使用したツール類、データ分析の方法に使用したソフトウェアなどの詳細が含まれます。必要であれば、他の研究者があなたの研究を再現できるよう、付録を活用するなどして十分な情報を提供するようにしてください。
このセクションでは、研究中に収集したデータに対する分析結果を提示します。つまり、明らかになった事実を記載していけばよいです。ただ、その示し方は工夫が必要です。まず、結果の詳細は可能な限り図表で示します。そして、図表はそれ単独で何を示しているかを、読者が理解できるように作成する必要があります。結果の本文は、図表の繰り返しにならないように注意しながら(ここ重要!)、その主な要点を明確に伝えてください。
このセクションでは、研究で何が発見できたのかを述べた後に、それと研究テーマに関連する過去の重要な知見との関連性について論じていきます。つまり、考察の冒頭では主な発見事項(結果)を明示するのです。それを受けたうえで、結果と他の研究との関連性を明確にし、これらの知見を実際の場面に応用する可能性についても議論します。また、予想外の結果が出た場合は、研究デザインや使用した方法に内在する限界と同様に、考察のなかで議論する必要があります。最後に、この研究プロジェクトから得られた知見に基づいて、今後の研究への示唆を述べ、他の研究者が将来この研究を基に研究を進められるようにしましょう。
IMRaDに対するよくある疑問とその解答は以下の通りです。
IMRaDとは、Introduction、Methods、Results、Discussionの頭文字をとったもので、日本語に訳すと「序論」「方法」「結果」「考察」になります。
IMRaDフォーマットは、研究論文のための一般的な構成であり、論理的に首尾一貫したかたちで研究内容を伝える設計されています。IMRaDフォーマットの4つのセクションは、それぞれ特定の目的をもっています。
IMRaDの「序論」セクションの目的は、研究の背景の文脈を提供し、その研究で取り組む研究課題を明確にすることです。この目的を達成するために、研究テーマに関連する情報を説明し、既存の文献を整理したうえでリサーチギャップを特定します。
IMRaDの「方法」セクションの目的は、読者が研究の手続きを理解し、評価し、研究を再現できるようにするために、必要な情報を提供することです。したがって、「方法」セクションでは、研究デザインとその実施方法に関する詳細を提供します。
IMRaDの「結果」のセクションの目的は、「序論」セクションで提示した研究課題に対する解答を明確に提示することです。「結果」セクションは、重要な発見を説明するために、表図や本文で主な結果を提示します。
IMRaDの「考察」セクションの目的は、結果に対する「だから何?」という疑問に答えることです。そのために、「序論」セクションで示したような過去の重要な知見と新しい発見を関連付けながら結果を解釈し、将来の研究や実践に対する含意を考察します。
IMRaDは、研究論文によく使われるため、編集者や査読者を含む読者が理解しやすいという利点があります。他方、柔軟性に欠けるところがあるため、一部の研究で型にはまりにくいという欠点があります。
全体として、学術論文の IMRaDを理解し、それに従うことは、学術雑誌の出版基準を満たした研究論文を効率的・効果的に執筆するために不可欠です。IMRaDの各要素が論文に詳細に記述されていれば、著者は研究論文の採否を決定する前ににあたって情報を必要とする査読者から、肯定的な評価を受けやすくなります。これらのヒントを念頭に置き、より多くの初学者が自信を持って研究論文を投稿し、査読を受けられるようになることを願っています。
研究成果を効果的に伝える研究論文の書き方でお悩みではありませんか?IMRaDは研究論文の執筆で広く受け入れられているフォーマットで、これをマスターすることで、研究内容を多くの人に効果的に伝えることができます。
そこで、私は「IMRaDを使った研究論文の書き方講座」という無料Webセミナーを開催しております。この無料Webセミナーでは「序論」「方法」「結果」「考察」のセクションを含む、IMRaDフォーマットの主要な要素について学びます。また、効率的な書き方のヒントも得られます。
この機会にぜひ、研究論文のライティングスキルを向上させ、キャリアアップに繋げてください。今すぐ登録して、無料Webセミナーの座席を確保してください。皆様のご参加をお待ちしております。
京極真、博士(作業療法学)、作業療法士。
Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:保健科学研究科長、人間科学部長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了。研究関連の著書に『セラピストのための研究論文書き方ガイド』(三輪書店)、『作業で創るエビデンス』(医学書院)、『質的研究で使えるコーディング入門ガイド』(Thriver Books)がある。その他、著書、研究論文多数あり。
利用規約 / プライバシーポリシー / 特商法表記